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アステロイド・シティ


隕石が落下して出来た巨大なクレーターが観光名所となっているこの町に、科学賞を受賞した5人の少年少女とその家族が招待される。子どもたちに母親が亡くなったことを言い出せない父親、映画スターのシングルマザーなど、参加者たちがそれぞれの思いを抱える中で授賞式が始まるが、突如として驚きの事態が起きてしまいという設定。

ウェスアンドルソンはアート系の監督として知られ、こだわり抜いた作品で魅了されている。ウェス・アンダーソン監督のつくる映画といえば「おしゃれで個性的」、ディテールが甘い、ミニチュアのような世界の作り上げが得意だろう。その人形の家のような世界には、カメラワークはストップモーション・アニメーションにおける動作に似ている。同時に、そのカメラワークは作品世界の奥行きを感じさせながら、リアリティの玩具化を左右する。また、ウェスの特徴に関して言えば、登場人物は画面の中央にミドルサイズで据えられて、不自然なほどのシンメトリーに貫かれている。そればかりではなく、細かいところまでいく人物のデザインから建物の外装と内装に至ることには、ウェスアンドルソンに固有なスタイルが目立ている。

また、この映画に集まったキャストは想像を超えるほど、素晴らしい。ジェイソン・シュワルツマン”を始め、“スカーレット・ヨハンソン”、“トム・ハンクス”、“ジェフリー・ライト”、“ティルダ・スウィントン”、“エドワード・ノートン”、“エイドリアン・ブロディ”、“リーヴ・シュレイバー”、“ブライアン・クランストン”、“スティーヴ・カレル”、“マヤ・ホーク”、“ルパート・フレンドというギャングがいるからこそ、映画は完璧に近いと言える。俳優陣が凄い顔触れで、演技が上手いという点も触れないといられない。ティルダ・スウィントンはウェスアンドルソンの世界に馴染んでいるように見え、ショットによく合う印象を与える。

しかも、登場人物の服装も監督の法に則ってその個性を示唆している。俳優は劇中ほぼずっと同じ服装でいたり、ユニフォームのような服を着ることも、キャラクターを観客に伝え、同時にパーソナリティを剥ぎ取る重要な役割を持っている。

いずれにせよ、『アステロイド・シティ』の物語は、ひょんなことから隔離状態に陥った小さな町を舞台にしている。物語構造が少しややこしくて、作中で再現劇が行われており、つまり俳優は「俳優」を演じ、その作中の「俳優」は別のキャラクターを演じている設定で、作家と観客の間の対話は複層のレベルに行なわれている上に、ここから作品の多次元性が生み出されている。

一方、物語の重層化された構成の反面には、アステロイドシティの閉鎖空間である。目を惹かれるディティルに装飾されている整理整頓のアステロイドシティ空間はわざとステージ、また撮影現場にすぎないものとして上映されている。先に言ったように、玩具化されている街はリアリティから遠ざける上に、一見で無邪気、ぬいぐるみような街の設定との併置で人間の性質を扱っている空間として出てくる。ここで物語の重層性とその物語が展開してくる空間の隔離は非常に興味深い対比を取り上げる。

その対比を貫いて、観客者はリアリティと劇場、つまり現実と芸術の間の二項対立が脱構築されている。特に、「You Can“t Wake Up If You Don”t Fall Asleep」というテーマソングはそのモチーフにもう一つの次元を追加しているだろう

併置してみれば、ステージで演じている役者は何回もステージから離れ、並行のリアリティに移動して、そこには自分の演技、「役の解釈」について問いかける。

俳優が役を演じるアステロイドシティは「リアリティ」の実験地として扱っているのではないかと思っている。物語が複雑になれば、複雑になるほど、俳優は自分の演技に疑う上に、彼らには「役の芸術」に対して劣等感が生まれてくる。結果として現実と夢、ステージとステージの裏、物語と作家というような二項対立には、だんだん脱構築され、新しいうウェスアンドルソンっぽく人形のような世界で再建築されてくる。

主な言葉としてはここに隠秘されている意味であるのが、芸術そのものが夢であるということだ。人間がその夢に沈みこもないと、カタルシス、いわゆる目覚めを味わうわけはない。言い換えれば、現実からの離れはむしろその現実へ近づける一番効果的な方法である。無意識、また、認識されたないことがむしろ銀じつと非現実の間における境界の切り開きであるし、四壁だけではなく、人間の意識によって作られている芸術と現実の二項対立の次元を超える方法としてあわれてくる。

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